「事の始まりはマナを信仰する教会組合“マリア・ヴェイル”と、それに反抗するレジスタンス“カイン”の争いです。


 マリアは世界樹を守ろうとする保護団体――と言えば聞こえは良いでしょうがつまりはマナを神格化する余りその他を敵視するテロ組織です。
 
 
 カインはそんなマリアに不満を持つ者達で結成されています」



「最初は議会で言い争うレベルだったが、近年減少の傾向にあるマナの所為でマリアが血気盛んになった。


 マナを守る為だと言い、マナを動力にした機関を破壊。そしてそれを保有している場所を壊滅状態にまで追い込んだ」



「そんなことがあればカインだって黙っちゃいません。マリアに対抗すべく、教会のある町を襲っています。


 そして、今回の件―――とうとう大元である世界樹に手を出したんです」



「傷と言っても小さい、ほんの数cmの傷だ。だがそれでも世界樹は確実に弱っていく。薄れたマナは更に薄れ、次第に枯渇していくだろう」








「それと、となんの関係があるんだ?」


「正直俺もまだわかってないぞ。ジェイとセネルが何を焦っているのか」



状況が読み込めないスパーダとアッシュ。

勝手に答えて良いものかも判らず、問い詰めてくる二人に答えられないセネルとジェイ。
















「それは、が“ディセンダー”だからでしょう」











「「「「!!!」」」」





部屋に入ってきたのはジェイド、後ろにはリフィルもいた。
そして、見覚えの無い人物。






「初めまして〜」


ボサボサの髪の毛、口元には無精髭、眠たそうな表情。
深刻な話をしている最中だと言うのに、真剣味が全く感じられない中年男性。





「こちらの男の存在は無視して結構です」
「ちょっジェイドちゃ〜ん。そりゃ無いでしょぉ」
「30過ぎの男をちゃん付けで呼ばないでください。まあこの男はレイヴンとでも呼んでやってください」
「よっろしく〜☆」



ウインクしながらVサインをしている中年男性。
場の空気が一瞬凍りついた(笑)




「話を戻すわよ。世界樹が傷つけられた、この事によって世界樹の分身であるにも異変が起きたんだわ」

「おいちょっと待てよ!!ディセンダーって御伽噺だろ!?なんでがそれなんだよ!」
「信じられるか!そんな話!」





「本当に信じられないの?おたくら、この坊ちゃんと今まで一緒にいたんだろ?そういう場面に遭遇したことは一度も無かったわけ?」



「っ……」

「く……」



そう言われてみれば、言い返す言葉もない。











「みゅうぅぅ…さん」
様…」


悲しげなミュウやテネブラエの声に、全員の視線がに集中する。
閉じられた瞳はまだ開かれる様子は見受けられない。


スパーダは拳を握り締める。
苛立ちを隠せないのか、部屋を飛び出そうとした。


しかし、それをセネルが阻んだ。






「待てよ!」

「放しやがれ!!てめえは知ってたんだろ!?なんでだよ!俺はお前より長くアイツといたってのに!なんで俺には言わねえんだよ!!」






「自分が
“御伽噺”に出てくる“ディセンダー”だって名乗るような奴、最初から信用する?」

「!」




レイヴンはスパーダの方を見ずに言った。
声は呑気だが、彼の言葉はとても冷静だった。




「あんたはディセンダーの存在を信じてんのかい?それなら非はこの坊ちゃんにあるけどね。
 
 “私は神の使いです”なんて言う奴を最初から受け入れてくれるような呑気者ばっかりならこの世はどれ程平和なものか」


「私はこの目で見たものしか信じません。軍人なら尚の事、不確かな情報に振り回されるわけにはいかない。
 
 もし、が自分の事を“ディセンダー”と吹聴するような人物なら虚言癖のある不審人物として軍に拘置していたかもしれません」




「ジェイド…!は…」

「ええ、解っていますよセネル。私は自分の意志で彼の話を聞き、その上で信じているのですから」



ジェイドの瞳が柔らかく微笑む。


冷酷なネクロマンサーと戦場では恐れられている彼は簡単に人を信用したりしない。
それが同じ部隊の人間だろうとも。

軍にいる以上、汚い世界も歩んできた。
綺麗事だけでは救えないものもある事も知っている彼だからこそしっかりと現実を見据える事が出来るのだろう。








「…う」




小さく聞こえた声、けれど部屋の中にいる全員にしっかりと届いた。



が目覚めたのだ。









さんっ!!」


ミュウが歓喜の余り飛びつく。
はゆっくりと目を開けた。







「…あれ、オレ…」



様!わかりますか!?」

「テネブラエ……?ここは…エヴァ…?」

「そうです!シュヴァルツとの戦いを終えて戻ってきたのですよ」


「……!!そうだっ皆は!?」

寝惚け眼から一気に覚醒するとは飛び起き、周りを見回す。
ジェイドやアッシュ、スパーダやジェイにセネルがいることを確認するとホッと安堵の笑みを浮かべた。







「……よかった」



!気分はどうだ?どこか苦しいところはあるか?」
「何か異常があるなら教えてくださいね」


セネルとジェイがに話しかける中、スパーダはぎゅっと拳を握り締める。

その拳を―――――――











に振り下ろした。









「っ…!」


「スパーダ!!!」









殴られて呆然としていると、激昂しているセネル。
ジェイは様子を伺っている。




そして、スパーダはもう一度右手を振り上げた。
今度はアッシュも止めようとしたが、ジェイドにそれを阻まれた。





スパーダはの胸元を掴み、顔を近づける。







「殴れ」


「…へ?」





「今、俺が殴ったのと同じ様に殴れ。それでチャラだ。全部、チャラにしてやる」

「え?ちょ、スパーダ…何言って…」

「良いから殴れってんだよ!!」

「????」



混乱する
スパーダの言う事が判らない。






「はーいそこまでです」
「続きは坊ちゃんが完全回復してからでいいでしょーよ。その方が全力で殴れるし♪」




ようやく止めに入ったジェイドとレイヴン。

は今だ状況が解らない。






「セネル、説明をお願いします」
「なんで俺なんだよ…」




ジェイドの投げやりな態度にセネルは一気に疲れが出た気分だった。